ヴェン島

ヴェン島は、デンマークとスウェーデンのあいだに広がるエーレスンド海峡に、一枚の黄緑色の葉がそっと舞い降りたような島だった。

スウェーデンのランズクルーナからフェリーで約30分。島の北東にあるベックヴィーケンに着く。
遠くから眺めると、島にはスウェーデンでよく見かける松林はなく、名前も知らない木々が風に揺れ、黄と緑の畑がゆるやかに広がっていた。

桟橋のそばには、数軒の家が静かに建っていた。
数頭の山羊が、岸辺の丘でのんびりと草を食んでいた。

緑色のバスが停まっていて、旅人たちを島のあちこちへ運んでいた。
やがて桟橋は静かになり、空気の中にバーベキューの香りだけが漂っていた。

高台に立って見下ろすと、一隻の船が岸辺に静かに係留され、マストの影が海面に細い線を描いていた。
若者たちが岸で笑い声を上げ、その声は潮風に乗って遠くまで流れていった。

夕暮れの入り江、帆船と穏やかな海面

夕暮れの陽射しを浴びながら、島に一本だけ伸びる道を自転車で走った。
道の両側には家々がまばらに建ち、夕陽が路面を照らしていた。時折車が通り過ぎると、あたりはすぐにまた静けさに包まれた。
やがてホテルに着くと、数棟の木造コテージが、一面の麦畑の中に静かに佇んでいた。

少し休んでから、また自転車に乗って島をぐるりと回った。

西岸まで来ると、スマートフォンに「デンマークへようこそ」というメッセージが届く。
海峡の向こうには、街の輪郭がぼんやりと浮かんで見えた。
東岸へ回ると、ヘルシンボリとランズクルーナがすぐ目の前に見えた。
大型フェリーやヨットが海峡を行き交い、二羽の白鳥が岸辺の水面に静かに浮かんでいた。

海峡に浮かぶ二羽の白鳥

夕暮れが深まり、観光客は次々とフェリーで島を離れ、島は再び静けさに包まれた。
ホテルの部屋の外では、麦畑が島の端の海辺まで途切れることなく広がっていた。
遠くの海面にはかすかな光が揺れ、島はゆっくりと夕闇に溶け込んでいった。

夕暮れの海峡と麦畑

翌朝、朝食を済ませると、道をたどりながら島の北西へゆっくり歩いていった。
麦畑の向こうに、淡い紫がひっそりと広がっていた。

麦畑と紫の花畑、遠くに農家

道の突き当たりに、小さな桟橋があった。
デンマークやスウェーデンから来た小舟が、ゆっくりと出入りしていた。
岸辺には、数軒の家があるだけ。

バスに乗って、来た道を戻った。
フェリーはすでに桟橋に停まっていた。
汽笛が鳴り、岸辺の赤い小屋が少しずつ遠ざかっていった。

桟橋そばの赤レンガの小屋

ヴェン島は、また海峡の真ん中に浮かぶ、あの黄緑色の葉へと戻っていった。