夏休み

私の夏休みも、始まった。

その気持ちは、なぜか、子どもたちが夏休みを待ちわびるときによく似ている。
学校を離れてもう何年も経つというのに、夏休みが来ると、胸の奥に、久しぶりの、小さなときめきが、やはりそっと湧いてくる。
放課後、鞄を空高く放り上げた、あの一瞬のように。

ゆるむ

裸足のまま、部屋のなかをそぞろ歩く。

窓の外へ目をやる。
大きな雲が、淡い青空に浮かんだまま、じっと動かない。
木の葉は陽を浴びて光り、風に、そっと揺れている。

寝椅子に身を丸める。イヤホンからは、聞き慣れた旋律が流れている。
好きな本を、幾ページかめくる。
あるいはパソコンを開いて、これからの旅の計画を、なんとなく眺める。
あるいは何もせずに、ただ目を閉じ、そよ風が傍らをゆっくり吹き過ぎていくのに、身をまかせる。

ふと、学生時代の、ある夏休みに戻ったような気がする。

がらんと

この住宅街は、もともと人が少ない。
夏休みに入ると、なおさらひっそりとして見える。
旅に出た人がいる。夏の家へ行った人がいる。郊外の別荘へ戻っていった人もいる。

道を行き交う車が、目に見えて減った。
たまに通り過ぎるのは、きまって、若者向けに改造された小型車だ。
低くこもった唸りが、あたりの静けさをかき乱していく。

いくつかの街を通り抜ける。
中心街こそ、いくらか賑わっているものの、
長い夏の日々、通りはどこかがらんとして見える。
日差しが、街の角に落ちている。
たまに、人が通り過ぎる。

湖のほとりは、すこしばかり人の気配がある。
荷物を船に積みこんで、出発の支度をしている人がいる。
岸辺に腰をおろし、陽を浴びながら、長い午後をやり過ごしている人もいる。

郊外に出る。
まっすぐな道路が、限りない緑のなかに、沈んでいく。
大きな雲のかたまりが、低く、空に浮かんでいる。

夏休み