夏の音

夏の音

学校の多くは六月のはじめに、会社の多くは七月のはじめに、夏の休みに入る。
学校も、職場も、通りも、少しずつ人がいなくなっていく。

誰もが、この短い夏の陽を惜しむように過ごしている。
道ばたの、名も知らぬ草花までもが、夏の短さを知ってか、先を急ぐように伸びていく。

人は昼は陽を浴び、夜も眠るのを惜しむ——
指のあいだをこぼれ落ちていく光を、ひとすじでも引きとめたいかのように。

暗くなりきらない白夜のなかで、家のまわりの、草木の育つあのかすかな音さえ聞こえてくる気がする。
あれもまた急いでいる。
枝葉を四方へ伸ばし、この夏を覆いつくそうとするかのように。

今朝、起きてみると、まだ熱の残る空気に、かすかな涼しさが混じっていた。
その一瞬に、わかってしまう——
夏が、音もなく去ろうとしているのだと。

夏は、もう過ぎてしまったのだろうか。
胸のうちで、そっと自分に問いかける。

外の陽射しは、あいかわらず明るい。
人々もまだ、夏の軽やかな装いのままだ。

すぐそこのポプラの、こまかな葉が陽に透けている。
ただ、風が吹き抜けるとき、さやさやと音がして、胸の奥で、何かがそっと動いた。