お酒をすこし飲みすぎたみたいに、人はまだこの長い夏に酔いしれたまま、なかなか醒めることができない。
いまごろの中国や日本は、一年でいちばん暑い頃だろう。
湿気、蒸し暑さ、蝉の声、虫の音。
スウェーデンでは、夏がそっと涼しさをまといはじめた。
あの蒸し暑さも湿気も、風がどこかへ吹き飛ばしてくれた。
真昼の陽射しは相変わらず眩しいけれど、あのころのような焼けるような暑さはもうない。
犬を連れて、ゆっくり散歩する。
前のように舌を出して、日陰ばかりを選んで歩くこともなく、ぴょんぴょんと跳ねながら、あちこちを嗅いで、きょろきょろと見まわしている。
道の脇の草が、うっすら黄色く色づきはじめた。
白いデイジーだけが、まだ風のなかでそっと揺れている。
森の端の小さな駅まで歩いて、跨線橋の上に立った。
犬は一列の電車がゆっくりホームに入ってきて、またゆっくりと離れていくのを、じっと見つめていた。
空に浮かぶ雲が、動かずにそこにある。