夏は、まだ深まらない

夏は、まだ深まらない

ときどき、子どもの頃の夏を懐かしく思う。

照りつける太陽。
あちこちから聞こえてくる、蝉の声。

村の外には、青々とした田畑が広がり、
菜園には、瓜や野菜がたわわに実っていた。

小川のせせらぎが、
一面の緑の中から聞こえてくる。

大人たちは村の入り口の木陰で涼み、
子どもたちは三々五々、川へ泳ぎに走っていった。

夏が終わる頃には、
肌は真っ黒に日焼けし、
身体もひとまわり細くなっていた。

ときどき、大人になってからの夏が怖くなる。

白くまぶしい陽射し。
まとわりつくような熱気。

路面のアスファルトは、
溶けてしまいそうなほど熱くなっている。

壁にはエアコンの室外機が
びっしりと取り付けられ、
ブンブンと音を立てながら、
熱風を吐き出している。

人々は身をすっぽりと包み込み、
日よけ帽、サングラス、長袖、日傘。

外に出れば、
少しでも日陰を探して歩く。

夜になり、
ようやく熱気が少しずつ引いていっても、
散歩から帰る頃には、
身体はまだ汗でべたべたしている。

そして、今の夏。

蝉の声もない。
虫の声もない。

ただ、
風が木の葉を揺らす
さらさらという音だけが聞こえる。

扇風機もいらない。
エアコンもいらない。

夜、眠るときには、
薄い布団を一枚かける。

身体がまだ夏に染まりきらないうちに、
夏はもう過ぎていく。

ときどき、子どもの頃のように、
裸のままで夏を過ごしてみたいと思う。