長い夏の日々を過ごしていると、
いつしか夢と現実の境目さえ曖昧になってくる。
湖の真ん中に浮かぶ小さな舟のように、
風に身を任せ、ゆらゆらと漂う。
夕陽は森を抜け、
静かな湖面をやさしく照らしている。
何を考えるでもなく、
空をゆっくり流れていく雲を眺めていた。
気がつけば、
舟はいつの間にか岸へとたどり着いていた。
一か月あまりの夏休みは、長い夢のようだった。
夢から覚めて、また仕事の日常へ戻る。
パソコンのパスワードを何度か打ち直し、
ようやくログインできた。
受信箱にはメールが静かに並んでいる。
目を通してみても、急ぎの用件はなさそうだ。
同僚とのオンライン会議を終えると、
思わず外へ歩きに行こうとしてしまう。
立ち上がったところで、「ああ、もう仕事中だった」と苦笑する。
何年も続けてきた仕事なのに、どこか手がぎこちない。
あれこれしているうちに、気づけば昼になっていた。
木陰へ出ると、
夏の終わりを思わせるような涼しい風が頬をなでる。
顔を上げる。
白い雲は、
梢のあいだをゆっくりと流れていく。
夏は、
こうして静かに幕を下ろしていくのだろう。