秋

一夜にして秋になる、ということはない。
春を裏返して、おぼつかない足どりで、もう一度なぞるように。

春には、枝先に芽吹いたばかりの淡い黄の若葉が、冷たく澄んだ光のなかで、きらきらと光る。
秋には、枝先の黄ばんだ葉が、弱くなった光のなかで、透きとおる。風が過ぎると、かすかに揺れて、なかなか止まらない。

ここでは、春と秋の賞味期限が、どちらもそっと延ばされているようだ。

走っていると、風にひとすじの涼しさが混じる。
道ばたの草花は、まだ風に揺れている。ただ、前のような勢いはない。
森を抜けると、空が高く、雲が淡い。

人々は、まだ外で時間を過ごしている。

湖には小舟が浮かび、岸の石の上では、背中を出して日を浴びる人も多い。
ただ、まっすぐだった葦が、わずかに傾いた。

ときおり、古い家の前を通る。一階の窓が開け放たれている。
窓辺に腰かけた人が、西日に顔を向けている。

夜、犬を散歩させるころには、もう、日が暮れるのが早い。
装いはまだ夏のまま。ただ、ときおり、上着を一枚、羽織る。